『ワン・プラス・ワン (One Plus One)』

ストーンズ (The Rolling Stones) 「悪魔を憐れむ歌 (Sympathy for the Devil)」レコーディング風景を記録した映像を軸に、上下左右に転がりながら展開するゴダール映画『ワン・プラス・ワン (One Plus One)』。5月革命の年、すなわち1968年の6月と8月にロンドンで撮影された、ストーンズにとって最高の栄誉というべき映画。

The Rolling Stones 転がり続ける石

スプレーの落書き

Mao

 r

 t

FREUDEMOCRACY

 M

 A

 R

SEX

CINEMARXIST

並行して提示されるいくつかの闘争のあり方。自らが信奉するイデオロギーの表明・伝授の仕方。

町中にスプレーで落書きをし続けるひとりの若い女性の場合。ブラック・パンサーの戦闘員たちの場合。ヒトラーの『わが闘争』を朗読する書店の主人とタイピストの場合。森の中でTVインタヴューを受けるイブ・デモクラシー (EVE DEMOCRACY) の場合。そして、レコーディングのための演奏に従事するロックアーティストの場合。

ある者たちに対しては批判的な眼差しが、そしてある者たちに対しては共感する眼差しが向けられる。一見、混乱しているかにみせかせながら、その実、きわめて精密に計算され尽くした理知的かつ人間的な配慮のもとに構成された映像。ゴダールならではのもの。

ところで One Plus One ってなんだろう?

One がストーンズ(すなわちロックミュージック)だとしたら、もうひとつの One は政治活動?One がアートだとしたら、もうひとつの One は闘争?

だとしたら、

One Plus One =∞ (infinity) ?

The Rolling Stones 転がり続ける石

ロンドンのオリンピック・スタジオ。あるロックグループがひとつの曲を作り上げていくプロセスの記録映像。そこに記録されているのはストーンズのメンバーたち(オリジナルメンバー)、彼らとセッションする他のミュージシャンたち、ミキシングルームのスタッフたち、飲み物やタバコを差し入れに来るスタッフ、ピアノによりかかりながら音楽に合わせてスイングしている女性、典型的な英国の労働者って感じの裏方のおじさんたち、マネージメントかなにかを担当しているような背広姿のエリートっぽい男性たちなどの姿。

ヴォーカルのミック・ジャガーがくちずさむメロディーにメンバーがリズムをつける。歌詞はすでに出来上がっているようだ。だが、リズムがあわない。途中、リズムやテンポをなんども変えながら、頭のなかにあるイメージを具現化していこうとするミック。それに応える形で、曲に具体的な形を与えていくメンバーたち。だれかの音にだれかが音で応える。リズムにリズムで応える。次第にテンポが合い、やがてみんなの呼吸がひとつになっていく。身体が自然とスイングしていく。身体が音と一体化していく。ひとつの曲に生命を吹き込む作業を通して、クリエイティブなエネルギーを共有しながら、そこにいるみんなが、どこまでも多様なひとりひとりの人間が、ひとつになっていく。

もしかしたらこれこそが人と人との結びつきの理想のかたち、すなわち「連帯」のモデルなのではないか?この映画を見ながら一番強く感じたのは、まさにこのことだった。

追記:

ここに記録されているのは、R&Bが大好きで、むさぼるようにロックのサウンドとリズムの世界に浸りきっていた、若きロックミュージシャンたちの姿。華麗なる世界的スーパースターになる前の彼ら。

ヴォーカル:ミック・ジャガー(当時25歳。フリルがいっぱいついた白のブラウスがおしゃれ)

ベース&ギター:キース・リチャーズミック・ジャガーと同い年だけど、誕生日前だから当時24歳。パイロットみたいなでっかいサングラスしてたり、シャツのはだけた胸にエスニック調のネックレスをジャラジャラ下げていた)

ギター:ブライアン・ジョーンズ(当時26歳。この映画の翌年1969年6月ストーンズからの脱退勧告を受け、7月には自宅プールで水死体で発見されることになる。そのことを思うと胸が詰まる)

ドラムス:チャーリー・ワッツ(当時27歳。この人はとても渋い人です)

パーカッション:ビル・ワイマン(当時32歳。スラックスとシャツそしてブーツまでピンク系で統一してたファッションはとても素敵)

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