「いわゆるテレパシー能力は、動物たちにとってごくあたりまえのリアルなコミュニケーション方法なのですが、とくに象は優れたものを持っています。

象の場合、そうした本能的な能力のほかに、多くの学習も必要です。人間と同じように、年長者からたくさんのことを教わる必要があるのです。だから年寄りのメスやオスが殺されると、そこで多くの知識が失われ、象の社会に致命的な混乱が起こるのです。」

 こう語るのは、ナイロビ国立公園内の土地で、象牙密猟者により親を殺された象の赤ちゃんを育て野性に還す活動を続けている、動物保護活動家のダフニー・シェルドリック(Daphne Sheldrick, 1930年、ケニア生まれ。Jean-Luc Godard と同い年)。

「象は、その大きな体を維持するため、1日300ポンドもの植物を食べます。これは一見、自然を破壊しているように見えますが、実はその正反対なのです。長い目で見ると、彼らは、森を草原に変え草原をまた森に戻すという、自然の循環に大きな役割を果たしているのです。そのため象の消化システムは、わざわざ食べたものの60%をそのまま外に出してしまうという非能率的なものになっています。だから象のお腹に入った種がそのまま100マイルも遠くに運ばれ、そこで森や草原に再生してゆくのです」

「さらに、象は少しでも食べ過ぎたり栄養が足りなかったりすると、たちまち力を失い死んでゆきます。干ばつが続き、自然界に食べ物がなくなったとき、最初に死ぬのは象です。彼らは死を受け入れることを決意すると、自ら食べるのをやめます。食べるのをやめた象は、わずか1日で死んでいきます。」

「しかし、その死は、静かで平和な死です。象は自分たちの命を自然の大きな力に任せながら、その中で高度な知恵を働かせているのです。」

 わたしがシェルドリックの存在を知ったのは、龍村仁監督の映画『地球交響曲 / ガイアシンフォニー』からです。

「野生の象たちは、殺された仲間の遺体から象牙だけを取り外し、砕き、遠くの森に運んで隠します。これが不理屈な死を迎えた仲間に対する、最後のはなむけなのです。しかも彼らは、人間と同じように仲間が亡くなった場所を何度も何度も訪れます。彼らは『死』ということの意味を知っているのです。」

 シェルドリックの言葉はすべて『地球交響曲 / ガイアシンフォニー』映画パンフレットからの引用です。

 『地球交響曲』公式サイト:

 http://www.gaiasymphony.com/...

 こういう本もあるらしい

        ↓

 ダフニ・シェルドリック『愛のアフリカ象 エレナ(An Elephant called Eleanor)』

 (佐草一優訳、自由国民社、新装版、2000年)

 このキーワードのお薦め BGM はもちろんこれら

        ↓

 ヘンリー・マンシーニ作曲「子象の行進」

 http://www15.big.or.jp/...

        &

 まど・みちお「ぞうさん」

の画像