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石橋湛山の預言

なにかの精神がその時代に生きる多くの人たちによってなんの疑いもなく受け入れられ

その自明の精神のうえに彼らの日常、人生設計が構築さているとき

その精神の病に気づき

その精神が早晩消え去るであろうことを予見しているひとたちが

いつの時代にも存在する

彼らは彼らが属する時代に先行しているため

同時代の多くの人たちには彼らの見ているものが理解できない

だから彼らは異端と見なされることが多いし

私利私欲、利権にまみれた連中たち

盲目のあほうどもの策略にかかり

時代から抹殺される

けれど彼らの声はかき消されはしない

彼らがそれを声に出し

書き

なにかの記録が残されている限り

わたしたちは発掘しその声をふたたび聴き取ることができる

そしてそれが未来を創る力を持っていたことを

来るべき時代の預言の声であったことを知る

大日本帝国が世界列強に伍するための資源確保と国防の戦略のために中国大陸への進出が自明のことと考えられていたその時代に、これからの日本がとるべき道は、植民地の放棄と平和主義であると主張し、しかもその根拠を経済学的見地から解説した人物がいた。石橋湛山であった。

大日本主義の幻想」(長文論文『新報』1921年7月30日号、8月6日号、8月13日号に掲載)で湛山は、朝鮮・台湾・関東州が経済的に採算が取れていないことや、中国シベリアに対する干渉政策が経済的に不利益であることなどを指摘し、植民地時代はやがて終わるであろうこと、日本は平和主義により領土より資本を充実させる方を優先させるべきであることなどを説く。

《吾輩は思う、台湾にせよ、朝鮮にせよ、支那にせよ、早く日本が自由解放の政策に出づるならば、それらの国民は決して日本から離るるものではない。彼らは必ず仰いで、日本を盟主とし、政治的に、経済的に、永く同一国民に等しき親密を続くるであろう。支那人・台湾人・朝鮮人の感情は、まさにしかりである。彼らは、ただ日本人が、白人と一緒になり、白人の真似をし、彼らを圧迫し、食い物にせんとしつつあることに憤慨しておくのである。彼らは、日本人がどうかこの態度を改め、同胞として、友として、彼らを遇せんことを望んでおる。しからば彼らは喜んで、日本の命を奉ずるものである。「汝らのうち大ならんと欲う者は、汝らに使わるる者となるべし、また汝らのうち頭たらんと欲う者は、汝らの僕となるべし」とはまさに今日、日本が、四隣の異民族異国民に対してとるべき態度でなければならぬ。

 しからずしてもし我が国が、いつまでも従来の態度を固執せんか四隣の諸民族諸国民の心を全く喪うも、そう遠いことでないかもしれぬ。その時になって後悔するとも及ばない。賢明なる策はただ、なんらかの形で速やかに朝鮮・台湾を解放し、支那・露国に対して平和主義をとるにある、しかして彼らの道徳的後援を得るにある。かくて初めて、我が国の経済は東洋の原料と市場とを十二分に利用し得べく、かくて初めて我が国の国防は泰山の安さを得るであろう。大日本主義に価値あるとするも、すなわちまた、結論はこれに落つるのである。》

彼は、その平和的世界観を提示するにあたって、経済的根拠を持ち出す。しかし、そこに哲学的な思想がなければ、根底に流れる人間や社会に対する愛がなければ、どんな理論も、どんな経済学的論証も、意味がない。未来を創りだすことなど到底出来ない。

「現在使われているような意味での予言者など、かつて存在したためしなどない。ヨナは現代的意味での予言者ではなかった。というのも、彼のニネベに関する預言は、はずれたからだ。誠実な人たちは皆だれもが預言者だ。彼は私的な事柄と公的な事柄のどちらについても自分の意見を述べる。だから、もしあなたがそうし続けるなら。結果はそういうふうになるのだ」

(ランダフの司教、リチャード・ワトソン『聖書の弁明』余白へ書き込まれたウィリアム・ブレイクの言葉)

【附記】

経済(けいざい)

1. [文中子(礼楽)]国を治め人民を救うこと。経国済民。政治。

2. (economy)人間の共同生活の基礎をなす財・サービスの生産・分配・消費の行為・過程、並びにそれを通じて形成される人と人との社会関係の総体。転じて、金銭のやりくり。

3. 費用・手間のかからないこと。倹約。 

                     (『広辞苑』より)

理念なき政治家どもよ  

           失せろ  

                今すぐ   

                     舞台から

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