「ロンドン発 戦争反対を叫ぶ中東の人々」in『pen』

『pen』という雑誌の最新号に掲載されているロンドン在住の中東の人たちへのインタビュー記事が興味深い。

《5月に "戦闘状態は終了した" と公式に発表されてからも、アメリカ軍を中心とした有志連合は、一日平均1人以上の兵士の命を失っている。自爆テロによって、国連現地本部も爆破された。僕は立ちどまり、破壊された町並みを見ながら考えた。"いったい、中東はこれからどうなるのだろう" そしてロンドンへ戻ってから、中東の人々を訪ねはじめた。クルド系イラク人、イラン人、エジプト人、ヨルダン人、レバノン人、サウジアラビア人、そして中東音楽に共感するミュージシャンまで。多様な文化と背景をもつ中東の人々が語ったのは、一様に、アメリカ的な価値観に対する強い違和感、そして戦争への怒りだった 》

こう書いているのは現在BBCニュース24のスペシャル・プロジェクトで働くジャーナリストのイスラム・カーン、31歳。マンチェスター生まれのパキスタン人だが英国籍も持つ「第二世代」。

彼が取材をして記事に取り上げたロンドン在住の中東の人たちの見解はどれもなるほどと思われ実に学ぶところ大。そこで各インタビュー記事に添えられた見出しの言葉を以下にピックアップ:

ターヘル・エル・シャリフ(エジプト英国商工会議所事務総長:58歳:男性:エジプト人)says, 「イラクはアメリカにとって、第二のベトナムになる。いや、もっとひどいものに。」

ファジル・カワミ(難民センター勤務:42歳:男性:クルド系イラク人)says, 「クルド人の迫害問題は、アメリカ人にとっては、政治を操るカードにすぎない。」

リマ・アルナート(PR会社勤務:22歳:女性:レバノン人)says, 「中東問題のつらさ、それは繰り返される暴力、終わりのない悪循環なのです。」

ファラス・キラニ経営コンサルタント:24歳:男性:ヨルダン人)says, 「暗闇を呪うより、ローソクに火を灯せ!僕の出身地のヨルダンは、真の調停者になれるはずだ。」

サラ・アフシャール(TVジャーナリスト:28歳:女性:イラン人)says, 「イランは "悪の枢軸" じゃない。この国の未来は、革命の子供たちが担っていくわ。」

アフメッド・アルハナキ(TVジャーナリスト:41歳:男性:サウジアラビア人)says, 「ほとんどのアラブ人は、アメリカのことを、石油泥棒だと思っているよ。」

そして中東出身者ではないが:

ムシュタック(ミュージシャン:28歳:男性:バングラディシュ人の両親をもつ英国生まれの第二世代)says, 「いまイラクでなにが起きているのか、イスラム教の僕は、その真実と痛みを探りたい。」

テリー・ホール(ミュージシャン:44歳:男性:ユダヤ人の母とアイルランド人の父をもつ英国人)says, 「アラブ人もユダヤ人も、まったく同じ音楽を奏でる。国境はもう超えられている。」

《バスラからカラチへ、そしてカブール、果てはジャカルタまで。9・11のテロ以降、そしてイラク戦争の最中も僕は、中東やアジアのイスラム文化圏で大勢の人に取材をしてきた。そのとき、彼らが必ず口にする質問がある。「どうしてアメリカは、我々を憎むのか?」今回、ロンドンで取材した人たちとの会話の中でも、この問いが繰り返された。》

イスラム・カーンは続ける。

《アメリカは常に、テロリスト国家と宣言した国に対して、大量破壊兵器の保持を問題にする。しかし、現実にその大量破壊兵器を最初に使用したのは、アメリカだ。被爆地の長崎と広島が、永久の平和のシンボルであることが、その事実を物語る。問題が起きて、アメリカが世界に向かって交渉を始める時、いつも偽善や欺瞞がともなう。矛盾した政策が、人々の怒りを誘うのだ。》

《世界は、アメリカが食べたいものばかりを集めたファストフード・レストランではない。違った味や、違った人々が住む世界であり、アメリカもその世界を構成する一員でしかない。アメリカン・ウェイは単なるその中の一つであることを知るべきだ。》

pen 2003年12月1日号(No. 119 )定価500円

http://www.hankyu-com.co.jp/pen/...

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