『スプートニクの恋人』

村上春樹が書いている小説は、この人類の歴史において類いまれなる時代、すなわち、ついにテクノロジーの発達がわたしたち人間の制御可能な領域とレベルを遥かに超えてしまった時代に、わたしたちが、この傷つきやすい「やわな魂」をかばうがゆえ、苦しみ、時には、その魂が残っているがゆえ、生きる歓びにうち震え、そうしたことを繰り返しながら、だんだん、少しずつ、少しずつ、本当の自分になっていくために必要な「新たな象徴体系」を作り上げることを目論むものだとわたしは思う。村上春樹はこんな風に叫んでいるように、わたしには聴こえます。

「芸術なんて、くそくらえだ。これは、ぼくらが生き残っていくためのマニュアルであり、教典なんだ」と。

でも、これはわたし自身の内なる声なのかも知れないのですが。

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