『国家の仮面が剥がされるときー南アフリカ「真実和解委員会」の記録』

アパルトヘイト後の南アで人々が必要としたのは処罰ではなく「ウブントゥ」だった 〉

〈一九九五年十二月、南アフリカは真実和解委員会を設置することを決定し、私は、マンデラ大統領により委員長に任命されました。アパルトヘイト政策のもと、激しい虐待と人権侵害が行われた過去の真実を明らかにし、将来の和解へと続く処方箋を描くというその任務は、まさに地面を蹴っ飛ばして地球を回転させるのと同じくらい困難なことのように思えました。しかし、南アフリカは、「復讐ではなく理解すること、報復ではなく償うこと、処罰ではなく赦しが必要である」という精神に基づき、過去と正面から向き合うことを決定したのです。〉

(デスモント・ツツ、名誉大主教、元南アフリカ真実和解委員会委員長「日本の読者の皆様へ」)

南アフリカ真実和解委員会の特徴は、アパルトヘイトの構築とその実行に加担した者たちに対する魔女狩りではなく、アパルトヘイトに抵抗し自由と正義のために戦った者たちが行った人権侵害をも明らかにしたことにあります。我々は、どのような状況であれ人権が著しく侵された場合には、それは真実和解委員会の任務の対象であると考えたのです。〉

(アレックス・ボレイン、元南アフリカ真実和解委員会副委員長「日本語版発刊によせて」)

レックス・ボレイン『国家の仮面が剥がされるときーー南アフリカ「真実和解委員会」の記録』http://www.amazon.co.jp/...

『A Country Unmasked: Inside South Africa's Truth and Reconciliation』

http://www.amazon.co.jp/...

〈紛争終結国におけるすべての調停が、裁判と起訴のみの形を取るなら、それは悲劇だろう。よりよい状況に出会えるためにドアは開けておくべきである。私は、ボスニアの真実委員会は、将来の平和と安定に大きく貢献すると確信している。付言すれば、委員会の任務の一部に、「隣人たちを告訴することを拒否し、また、自ら大きなリスクを負いながら他民族や他宗教の隣人を虐殺から守ろうとした人々の存在と行動」を明るみに出す任務を含めて欲しいと思う。私は、この「美しい話」を語ることに重きを置くことは、他の多くの真実委員会が学ぶべきものと考える。そして、南アTRCが同様のことをすることができなかったことを残念に思う。どれほどの邪悪さがあったかと同様に、どれほどの善良さがあったかは忘れてはならない。〉

(第11章 真実和解委員会を超えてー「南アモデル」と国際社会『国家の仮面が剥がされるとき』、p. 243)

【目次】

日本の読者の皆様へ(デズモンド・ツツ

日本語版発刊によせて

第1章 和解への道ーー真実和解委員会の構想

第2章 議論から法律へーー国民統合と和解のために

第3章 多難な船出ーー作業をはじめた真実和解委員会

第4章 沈黙を破ってーー真実と和解のための公聴会

第5章 連帯責任か?ーー政党、経済界、宗教界、法曹界の聞き取り

第6章 狂気の季節ーーボタ前大統領

第7章 南アフリカの悲劇ーーウィニーマンデラ

第8章 真実の引き換えの恩赦ーー「南アモデル」の評価

第9章 真実和解委員会レポートへの反応

第10章 真実和解委員会が成し遂げたこと

第11章 真実和解委員会を超えてーー「南アモデル」と国際社会

終章 処罰ではなくウブントゥを

南アフリカの経験とUNHCR(緒方貞子

真実和解委員会からの十年(津山直子)

訳者あとがき

緒方貞子(元国連難民高等弁務官、JICA 理事長)は「南アフリカの経験とUNHCR」で、UNHCR(国連難民高等弁務官)は、ルワンダボスニア・ヘルツェゴビナでは「和解」よりむしろ「共生」に焦点をあて、「共生を想像する」パイロットプロジェクトなるものを立ち上げたことを報告している。

の画像