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『服従の心理』

スタンレー・ミルグラムによる、いわゆる「アイヒマン実験」と称される実験の報告書。

山形浩生訳の2008年新訳版。

【目次】

序文

謝辞

第1章 服従のジレンマ

第2章 検討方法

第3章 予想される行動

第4章 以外社との近接性

第5章 権威に直面した個人

第6章 さらなる変種やコントロール

第7章 権威に直面した個人 その2

第8章 役割の入れ替え

第9章 集団効果

第10章 なぜ服従するのかの分析

第11章 服従のプロセス 分析を実験に適用する

第12章 緊張と非服従

第13章 別の理論 攻撃性がカギなのだろうか?

第14章 手法上の問題

第15章 エピローグ

補遺

補遺1 研究における倫理の問題

補遺2 個人間のパターン

原註

参考文献

序文(二〇〇四年版)ジェローム・S・ブラナー

訳者あとがき

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2004年版に加えられたブラナーの序文と訳者あとがきの前半は、この実験の概要と今日的意味を知る上で役に立つ。

ただし、訳者による「蛇足 服従実験批判」以下の解説は、論理性を著しく欠いているので、その点について具体的に反論を展開したいと思う。

が、それは後日ということで、今日のところは、とり急ぎキーワード登録のみにて、失礼します。ごめんなさい。山形さん。

↑と書いて、姿を消していました。が、これだけはとりあえず言いたいと思い、戻ってまいりました(追記 31 July 2010)。

訳者あとがき「蛇足 服従実験批判」で、「服従は悪いことだ」というのが『服従の心理』の基本的メッセージだが、「服従は信頼の裏返しである」のだから必ずしも服従それ自体が常に悪いとは言いきれないといった議論を訳者は展開している。けど、なんだか、変だ。

「服従という現象だけを見ると、確かに何もチェック機能が働かずにまずい、と思えるようなこともある。だが、社会全体として考えた場合ーー個人の価値観を形成し、権威に権威としての権威をあたえるプロセスを含めた社会で考えた場合ーーどの服従の現場に至るまでに、道徳的なチェックはある。そう信じればこそ、ミルグラムの被験者たちの多くはとんでもない要求にも服従しているのだ。それは必ずしも、かれらが弱くて反抗できなかったということではない。その人たちは、もっと社会に信頼を置いているということだけではないか。服従とは、ミルグラムの示唆するような冷たい上意への隷属ではなく、実は信頼の裏返しなのだ」(山形浩生訳『服従の心理』p.314)

そもそも、服従と信頼はコインの裏表のような関係にあるものではないとわたしは思う。このふたつは似た外見をしているため、惑わされがちだけれど、両者はまったく別の人間原理に基づいた互いに相容れない関係性だと思う。

信頼は対象に対する愛を前提としてるけど、

服従は対象に対する愛の欠如を意味してる。

信頼は相手に対する想像力を前提としてるけど、

服従は無関心と想像力の欠如から生じてる。

社会への信頼は、服従を要求してこない社会に対してのみ可能となるだろう。

権威への服従を前提とするところで信頼は成り立たない。信頼は自主的で自律的なものだから。

それから、わたしが思うに、このアイヒマン実験の意義は、権威が命令すると、ひとはだれでもコロッとだまされて、その権威が邪悪だった場合、善良なひとでも邪悪なことをあっさりやっちゃうから、そのひとたちがやったことを責められないよ、悪いのはぜんぶ邪悪な権威の方だよ、ってなことを証明したことにあるのではない。むしろ、その逆に、悪というものは異常性格の人たちの特権ではなく、日常性の自明性になんら疑問をもたない凡庸さと陳腐さに寄り添っているものでもあるのだよということを明らかにした点にあると思う。つまり、自分たちは善良だと信じ込んでいる心性と邪悪な権威との共犯性を暴き出した点が画期的だったのだと思う。

というようなことが、言いたかったです。

もし、ある社会システムが、あーしろ、こーしろ、と、いろいろな場面で一方的に服従を求めてくるのであれば、それはそのあり方それだけで、邪悪な権威が背後にいると理解してかまわないと思う。

それがどのようなものであれ、個人の服従を前提としたシステムというものはその構成要員を貪り食おうとする残虐性をもつ。

だからもし現行の社会システムが構成要員の服従なしにそのシステムを維持できずにいるとしたら、それを信頼関係によって成り立つ社会システムに変容させていく努力をすべきだと思う。

構成要員が自主的に絶えず服従に抗い続けること。

小さなところからでもいいと思う。はてなと立ち止まり、空を見上げること。

とにかく小さいことからすべてが始まる。

同時に、小さいことが、全世界と直結している。

岸田秀訳『服従の心理―アイヒマン実験 』(河出・現代の名著、1995年改訂版)

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Stanley Milgram, 『Obedience to Authority: An Experimental View』 (1974)

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