BOX 東中野に出かけよう

 関心空間で BOX 東中野が閉館するとのニュースを知った。突然のことで本気で驚いた。というのも、土方巽主演映画の公開を記念する『疱瘡譚』上映+トーク+舞踏パフォーマンスに出かけたとき、通路に座布団を敷いて座る人まで出るほどの盛況ぶりをみて、あ~よかった BOX 東中野はまだまだ大丈夫、などと勝手に思い込み秘かに喜んでいたからだ。だがわたしの見方は甘かった。現実は厳しい。

 閉館のニュースを知ったわたしは、 さっそく BOX 東中野通いを念頭に入れ、スケジュール調整に入った。

http://www.mmjp.or.jp/BOX/

閉館のニュースを知ってからBOX 東中野で見た4本の映画リスト(2003年3月24日現在):

1. 土方巽主演『風の景色』(1988 / 日本(ボックス・オフィス) / 16ミリ / カラー / 67分 / 監督:大内田圭彌 / 撮影:堀田泰寛 / 照明:伴野功 / 音楽:大野松雄 / 出演:土方巽 芦川羊子 アスベスト館舞踏生)

http://www.walkerplus.com/tokyo/...

 この映画はとても貴重です。幻のフィルムと言われているものです。もし今、見ることがなければ、いつ見られるか分からないものです。そもそも、わたしたちは土方巽の舞踏をもはや生で体験することはできないわけなのです。もはや映像で残されたものを見るしかないのです。そういう意味においても、この映画はたいへん貴重なものです。

 土方巽というひとはとても不思議な《言葉》を発します。舞踏家ですから言語表現ではなく身体表現のプロなのですが、身体表現を極限まで追求したがゆえとしか思われないような独自の言語感覚を持っていた人と思われます。唐十郎が BOX 東中野でのトークショーのとき『病める舞姫』に収められている《言葉》、そして彼が日常どんな《言葉》を発していたのか、それらのいくつかを、紹介してくれたのですが、聞いてショックを受けました。す・ご・い  このひとは詩人なのだ

 『風の景色』のなかに土方巽が言葉を発しているシーンがあるのだけれど、その言語パフォーマンスもすごい。この人は本気なのだということが、ガンガン伝わってくる《言葉》。ものすごいエネルギーを発する《言葉》。身体というものを知り尽くしているがゆえに発することが可能となった《言葉》。嘘偽りのない《言葉》。純粋な《言葉》。孤高の《言葉》。不服従と反逆の《言葉》。すさまじい。

 ☆BOX 東中野での『風の景色』公開は3月28日 (Fri) までです。お見逃しなく!

2. 原一男ゆきゆきて、神軍』(1987年 / カラー / 35mm / 122分 / 監督・撮影:原一男 / 企画:今村昌平 / 録音:栗林豊彦 / 編集:鍋島惇 / 製作:小林佐知子 / 製作:疾走プロ / ベルリン映画祭カリガリ映画賞受賞、シネマ・デュ。レエルのグランプリ受賞)

 こんな映画があったなんて……。……。……。

 昨年(2002年)世界文化賞の授賞式に出席するため映画監督のゴダール (Jean-Luc Godard) が来日した。その際の来日会見でゴダールは「映画とは、ある国民が自分自身の姿を見極めようとするやり方だと思う」と語っていた。わたしは、この『ゆきゆきて、神軍』を見たとき、これこそが、日本国民が自分たちの姿を見極めようとする映画、いや、日本国民に、自分たちの姿、自分たちの本当の姿を見極めさせようと促す映画、過去の事実を、現在の日本の国がどういう過去の事実を隠蔽し、どういう事実と向き合うのを避けてきたのかを暴き出し体当たりで告発する実に実に重要な映画だと思った。にもかかわらず、わたしはこの映画の存在さえ知らなかったのだ。この関心空間で教えていただくまでは。そのこともまた別の意味レベルにおける大きなショックだった。

3. 森達也『職業はエスパー』(1998年 / カラービデオ / 50分 / 演出:森達也 / 作成:フジテレビ+グッドカンパニー)

4. 森達也放送禁止歌~唱ってるのは誰?規制するのは誰?~』(1999年 / カラービデオ / 50分 / 演出:森達也 / 作成:フジテレビ+グッドカンパニー)

 この2本の作品を見て、実にいろんなことを学んだ。たとえば『放送禁止歌』で、「竹田の子守歌」を放送禁止にした経緯は、現実の部落解放同盟とは全く無関係であること。部落解放同盟は「竹田の子守歌」に対しなんらクレームをつけていないこと。むしろ彼らはこの歌を好んで歌っていたという事実を知ったこと。放送禁止歌というのは放送局内での内部規定に過ぎず、なんの法的根拠を持たなかった、のみならず、すでに現在ではその内部規定も破棄されているという事実---つまり、かつて放送禁止歌と呼ばれていた曲は自由に放送してオーケーなのだ---といった事実を知ることができたのは、大変有意義なことだった。

 素人意見で大変申し訳ないのだが、これらの作品をできるだけ多くの人に見てもらうため、テレビで放映してはもらえないだろうか。もし、それが不可能なのだとしたら、それはどのような理由によるものなのか?もしそれが、製作者側に由来する理由ではなく、放送局側に由来する理由だった場合、それらの理由を具体的に検証していくことにより、これら2本の映画作品が伝えようとしている問題意識をさらに深化させていくことに繋がっていくのではないかと思った。

 現在、BOX 東中野で特別上映中の「アクションドキュメンタリー」映画。連日、一度見てみたい興味深い作品ばかりが続いています。にもかかわらず毎日映画館に通うというわけにも行かず、多くの作品を見逃してしまうことをわたしはとても残念に思っています。ですから、もしBOX 東中野に「アクションドキュメンタリー」を見にいらした方がいらっしゃれば、積極的にその感想を関心空間で公開してください。もし気に入った感動した作品があれば、バンバン宣伝してください。「アクションドキュメンタリー」映画特集も28日(Fri) までです。

http://www.mmjp.or.jp/BOX/images/...

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