済州島四・三事件

済州島四・三事件

茫然自失のあまり言葉を失い、その前でただ立ちつくすしかないほどの残虐非道。人間が、わたしたちと同じ人間が、目を覆うばかりのむごたらしさで殺されていく。人間が、わたしたちと同じ人間が、まるでハエを叩きつぶすかのごとく、当たり前のことのようにして人を殺していく。人が人を、相手が人だといういうことを知っているにもかかわらず、まるで相手が人だということを全く知らないかのように、意図的に、組織的に、合理的に、徹底的に殺していく。人間とは、わたしたち人間というものは、このようなことを平気でやる。

《過去(パッセ)は死んではいない それは過去(パッセ)ですらない》*

そう、過去は死んではいない。それはいまだ過ぎ去ってはいないがゆえ、過去ではない。いや、すでに過ぎ去ったもの、過ぎ去った《過去(パッセ)》として忘れ去ってはいけないもの。忘却の暴虐からたえず救い出さなくてはならないもの。それが過去。過去は何度でも蘇る。記憶がある限り。何度でも蘇る。「昔の記録=保存資料(アーカイヴ)」がある限り過去は死なない。

記憶と記録。記録を残しそれを記憶し続けること。記憶し記録し続けること。記録し続け記憶し続けること。何度もなんども、何度もなんども、そこに立ち返っては思い出し、記憶し記録し続け、次の世代に伝えていくこと。未来に伝えていくこと。未来がなければ、過去もない。《過去は死んではいない それは過去ですらない》。

済州島(さいしゅうとう/ チェジュ-ド):《(Cheju-do)朝鮮半島の南西海上にある大火山島。面積1840平方キロメートル。古くは耽羅(たんら)国が成立していたが、高麗により併合。1948年、南朝鮮単独選挙に反対する武装蜂起(四・三蜂起)の舞台となった。付近海域はアジ・サバの好漁場。周辺の島嶼と共に済州道をなす》-----『広辞苑』第五版

朝鮮半島の南に浮かぶ火山島・済州島で1948年4月3日、米軍政下で南朝鮮での単独選挙に反対した島民が武装蜂起したことをきっかけに、軍、警察などによる一連の島民虐殺事件が起きた。いわゆる「済州島4.3事件」のぼっ発である。東アジア現代史最大の悲劇の1つといわれている「4.3」事件の際、「3万人から6万人の島民が虐殺され、4万人以上が日本に逃れたという」(米国公文書の秘密文書を調査したブルース・カミングス・シカゴ大学教授)

 この事件は半世紀の間、「共産主義の暴動で討伐は正当だった」とされ、語ることがタブーとされてきた。

 しかし、金奉鉉氏(故人)が日本で記した「済州島人民たちの〈4.3〉武装闘争史」*(63年)、「済州島血の歴史〈4.3〉武装闘争の記録」*(78年)と、南の作家・玄基栄氏の小説「順伊おばさん」*(79年)によって事件そのものに初めて光が照らされ、その後、南朝鮮民主化と統一運動の高揚とともに事件の全ぼうと真実を明らかにする書籍などが刊行されるなど、改めて事件を見直そうという動きが80年代末から見えはじめた。》----------金泰基(キム・テギ)「済州島4.3事件53周年を迎えて---半世紀のタブー解明への動き」より引用

http://www.korea-np.co.jp/sinboj/...

◆◇『済州島四・三事件』「済民日報」四・三取材班 著(新幹社)

第1巻 『朝鮮解放から四・三前夜まで』 文 京洙 (共訳) ・金 重明 (共訳)

第2巻 『 四・三蜂起から単独選挙まで』 金 重明 (共訳) ・ 朴 郷丘 (共訳)

第3巻 『流血惨事への前哨戦』 金 重明 (訳)

第4巻 『焦土化作戦 上』 金 重明 (共訳 ・文 純実 (共訳)

第5巻 『焦土化作戦 中』 姜 聖律 (訳)

《内容(「BOOK」データベースより)「1948年、解放後の済州島で数万人が虐殺された四・三事件。『済民日報』が総力をあげて追跡・調査悲劇の済州島現代史に照明をあてる。1993年韓国記者賞受賞。」》----------『済州島四・三事件:第1巻 朝鮮解放から四・三前夜まで』Amazon.co.jp レビューより引用

《内容(「BOOK」データベースより)「1948年11月、済州島四・三事件は、焼きつくし、殺しつくす焦土化作戦へ。旧左→城山→表善→南元→西帰→中文→安徳→大静、それぞれの村での証言。」》----------『済州島四・三事件:第5巻 朝鮮解放から四・三前夜まで』Amazon.co.jp レビューより引用

◆◇済州島4・3事件55周年講演と済州島の劇団「ノリペ・ハルラサン」によるマダン劇*「漢拏(ハルラ)の慟哭」上演のお知らせ

2003年4月10日 (Thur)・11日 (Fri) 午後6時~

ホテル・ラングウッド4階、日暮里サニーホール(東京都荒川区東日暮里5丁目)

(連絡先、新幹社:電話 03-5689-4070)

【Notes】

*「過去(パッセ)は死んではいない それは過去(パッセ)ですらない」:ウィリアム・フォークナー『尼僧への鎮魂歌』からの言葉。ハンナ・アーレント (Hannah Arendt) が『過去と未来の間 (Between Past and Future)』のなかで、さらにジャン=リュック・ゴダール (Jean-Luc Godard) が映画『JLG/ 自画像 (jlg jlg)』のなかで引用している。

*金奉鉉「武装闘争史」:金奉鉉、金民柱共編『済州島人民たちの<4・3>武装闘争史』朝鮮文 (1963年)

*金奉鉉「済州島血の歴史〈4.3〉武装闘争の記録」:金 奉鉉(キム・ボンヒョン) 『済州島血の歴史 :4・3 武装闘争の記録』国書刊行会 (1978年4月); NDL 請求記号: GE132-16

*玄基栄氏の小説「順伊おばさん」:玄 基栄著 金 石範訳『順伊おばさん』新幹社(2001年4月)。「順伊」は「スニ」と読む。この本についての優れた書評→WEB マガジン「福祉広場」若田泰の本棚  http://www.fukushi-hiroba.com/art/...

*マダン劇:韓国独自の演劇スタイルなのだそうです。一度見てみたいものです。

【link】

http://www.fukushi-hiroba.com/art/...

http://www002.upp.so-net.ne.jp/...