1945年6月26日サンフランシスコにおいて「国際連合憲章(略して「国連憲章」)」*が調印され、1945年10月24日に発効。よって1945年10月24日「国際連合(略して「国連」、英語では「The United Nations」)」が発足。発足時の加盟国は51カ国。2000年9月5日、ツバルの国連加盟承認により、現在の国連加盟国総数189カ国。日本は1956年加盟。国連は次の6つの主要機関から成り立っている。すなわち「総会」*「安全保障理事会」*「経済社会理事会」*「信託統治理事会*」「事務局」*「国際司法裁判所」*である。「総会」から「事務局」までの5つの組織はニューヨークの国連本部で活動しているが、「国際司法裁判所」だけはオランダのハーグ*にある。
「国際連合憲章」は次のように宣言している:
「われら連合国の人民は、
われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた
戦争の惨害から将来の世代を救い、
基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに
関する信念をあらためて確認し、
正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持
することができる条件を確立し、
一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること
並びに、このために、
寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互いに平和に生活し、
国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、
共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法
の設定によって確保し、
すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用
いることを決意して、
これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定
した。
よって、われらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に会合し、
全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、
この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機構を設ける。」
(http://www.unic.or.jp/know/...)
また、国際連合はその目的について次のように述べている:
「1. 国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する
脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効
な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の
紛争又は事態の調整または解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法
の原則に従って実現すること。
2. 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展
させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
3. 経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決する
ことについて、並びに人種、性、言語または宗教による差別なくすべての者
のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、
国際協力を達成すること。
4. これらの共通の目的の達成に当たって諸国の行動を調和するための中心
となること。 」
(「国連憲章」第1章「目的及び原則」第1条
http://www.unic.or.jp/know/...)
国際連合広報センター(『国連 on line』http://www.unic.or.jp/index.htm)はこれらの目的を次のように要約している:
1. 全世界の平和を守ること
2. 各国の間に友好関係を作り上げること
3. 貧しい人々の生活条件を向上させ、飢えと病気と読み書きのできない状態を克服し、
お互いの権利と自由の尊重を働きかけるように、共同で努力すること
4. 各国がこれらの目的を達成するのを助けるための話し合いの場となること
http://www.unic.or.jp/know/form.htm )
で、話はここから始まるのである。
つまりわたしが問いたいのは次のことだ。
イラクに対する英米の武力行使をなぜ「国連」は止めることができなかったのか?
「全世界の平和を守り」「各国の間友好関係をつくり」「互いの権利と自由の尊重のため共同で努力し」「これらの目的達成のための話し合いの場」であるはずの「国連」が《平和》のために、《武力行使回避》のために、なぜなにもできなかったのか?なぜイラク問題を武力で解決することを許してしまったのか?ということなのだ。
「国連」が平和のために機能しない。この現実はわたしたちを無力感に追い込む原因のひとつとなっている。しかし、無力感に負けてはいけない。無力感にとらわれるあまり、ここで思考停止に陥ってはいけない。というのも、今回こうした現実を突きつけられることによって、ひとつの事実が明白になったからだ。明白になった事実。その事実とは、「国連」は、自らが掲げる目的とは裏腹に、実際には「全世界の平和を守り」*「各国の間友好関係をつくる」ための《システム》にはなり得ていないのだということ。
ならば、なぜ「国連」は世界に平和を構築することができないのか。なぜうまく機能しないのか、その原因について考えていかなくてはならないだろう。そのためには「国連」の成立の歴史、仕組み、現在の限界などを知っておく必要がある。そのための足がかりのひとつとなるのが、一般に「旧敵国条項」と呼ばれている「国連憲章第107条」*の問題である。
「国連憲章第107条」とは具体的に次のようなものである:
「この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。」
ここでの「第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国」という表現に驚いてもらいたい。十分に驚いてもらいたい。何度も繰り返し言うが、ここは実に驚かなくてはならない箇所なのだ。しつこいくらい言うようだが、驚くべきなのだ。どうだ、驚いたか。驚いたか。驚いたか~~~っ。
では、ここで再び冷静になって、この驚きが持つ意味について考えてみよう。というのもこの驚きは、新たな認識へと連なるからだ。新たな認識。そう、「国連」とは、とどのつまり、第二次世界大戦中の「連合国」主導の機関にすぎないのだという認識。
この KW の冒頭で述べたように、「国連」には現在、189カ国の国々が加盟している。だが、実際には、現在の「国連」は「安全保障常任理事国」の意志決定がすべての組織となってしまっている。では「安全保障常任理事国」とはどのような国々のことなのだろう。まず「安全保障理事会」というものがあるということを知ろう。この「安全保障理事会」は、15カ国で構成されているのだが、そのうちの5カ国が「常任理事国」、あとの10カ国が「国連総会」で選出され2年間の任期を与えられた「非常任理事国」である。5カ国の「常任理事国」とは、イギリス、アメリカ、中国、フランス、ロシアである(Cf. http://homepage3.nifty.com/...)。
では「常任理事国」と「非常任理事国」とは具体的にどう違うのか。「常任理事国」と「非常任理事国」の違い、より正確に言うなら「常任理事国」5カ国とそれ以外の184カ国との決定的違いとは、「常任理事国」5カ国だけが「拒否権」という《特権》を持っているという点にある。
ある特定の国のみが《特権》を持っている。ゆえにその《特権》を持った国々の「都合」(要するに「利害」)によって左右される、思いっきり乱暴な言い方をしてしまうなら、ある《特権》を持った国々、すなわち「安全保障常任理事国」が認めた「正義」に全世界にとっての「正義」としてのお墨付きを与える《システム》、それが現在の「国連」の実態なのだ。
というわけで、これはきわめて重要な問題であり、さらなる考察が必要だということが分かってきた今日この頃です。
↓こういうサイトも見つけました。
http://www004.upp.so-net.ne.jp/...
【NOTES】
「国連憲章」:国連の組織および活動の基本原則を定めた法規。原案は米・英・ソ・中国が参加して1944年8~10月に作られ、45年6月サンフランシスコ会議で採択され、同年10月24日発効(『広辞苑 第5版』)。
「総会」(「国連総会」):国連の最高機関。すべての加盟国により構成され、各国は5名以下の代表を出し、1国1票の表決権を持つ。行動機関ではなく、討議・勧告の機関で国連憲章の範囲内に関する問題・事項はすべて討議できる。年1回9月に定期総会を開く(『広辞苑 第5版』)。
「安全保障理事会」:(Security Council)国連の主要機関の一。米・英・ソ・仏・中の5常任理事国と、総会で選挙される10非常任理事国とで構成され、国際平和安全の維持を任務とする。常任理事国に拒否権が認められている(⇨「拒否権」:国連安全保障理事会において米・英・ソ・仏・中の5常任理事国が持つ。1国がこれを行使すれば決議は成立しない)(『広辞苑 第5版』)。
「経済社会理事会」:(Economic and social Council; ECOSOC )国連の主要機関の一。国連総会の選出する理事会の代表によって構成し、国際的な経済上・社会上・人権上の諸問題について研究・報告・提案・勧告を行う(『広辞苑 第5版』)。
「信託統治理事会」:国際連合の機関の一。信託統治に関する問題を処理する。信託統治地域がすべて独立したのに伴い、1994年以降活動を休止(⇨「信託統治」:国際連合の監督の下に、その信託を受けた国(施政権者)が一定の領土(信託統治地域)に対して行う統治。旧国際連盟の委託統治に相当する制度。信託統治地域は1994年までにすべて独立。)(『広辞苑 第5版』)。Cf.『国連憲章』第16条「信託統治に関する任務」。ちなみに「信託統治地域」とは以前の植民地あるいは従属地域のこと。
「事務局」:(United Nations Secretariat)。(⇨国連事務総長」:「事務総長は、世界の平和を脅かすと考えられる問題なら何でも、安全保障理事会に注意を促すことができます。事務総長は、総会や、国連のその他の組織が検討する議題を提案することができます。事務総長は、しばしば、加盟国間の紛争で「レフェリー」の役を務めることがあります。事務総長の仲介によって、安全保障理事会あるいは総会の討議を待たずに、または、大きな紛争へと発展する前に、問題が解決できることもあります。 」(『国連 on line』「国連の基礎知識」)http://www.unic.or.jp/know/presi.htm
「国際司法裁判所」:(International Court of Justice)オランダのハーグにある常設の国際裁判所。国連の主要な機関の一。15名の裁判官によって構成。国際連盟のもとで1921年に設立された常設国際司法裁判所(PCIJ)の後身。ICJ(『広辞苑 第5版』)。
「オランダのハーグ」:ハーグ(Den Haag)。オランダ西部の都市。旧王宮と政府機関の所在地で、事実上の首都。国際的政治都市で、平和宮・国際司法裁判所がある。人口44万9千(1944)。正式名称ス フラーフェンハーヘ。英語名ヘーグ。(⇨「ハーグ密使事件」韓国の李太王が1907年(明治40)ハーグで開かれた万国平和会議に日本の侵略の真相を訴えるため密使を派遣、会議参加を拒絶された事件(『広辞苑 第5版』)。
「全世界の平和を守る」:「全世界の平和を守る」とか「平和維持」といった言語表現における「守る」「維持」という言葉のレトリックにも敏感でありたい。というのも、この「世界」から未だ「暴力」は消えてはおらず、人を殺すための道具以外のなにものでもない「武器」は廃棄されていないばかりか、「武器」は製造され続け、この「世界」に「真の平和」は未だ構築されてはいない。それゆえ、「平和を《守る》」とか「平和《維持》」という言語表現は、「自分たちの平和を守りたい」「自分たちにとっての安楽な生活を維持したい」ある特定の集団にとっての利己的意図を巧妙に隠蔽し、それら特定の集団にとってのみの利益に過ぎないものを、あたかも全体にとっての利益であるかのごとくに見せかける働きをするという点において、きわめて狡賢い言語的罠とも言える。
「国連憲章第107条」:1995年の国連総会でこの条項を国連憲章から削除しようという決議が採択されたにもかかわらず、実際には未だ削除されていない。
(Cf. http://www004.upp.so-net.ne.jp/...)
【旧敵国条項についてこんなニュースがあったので、追記 (21 July 2005)】
《旧敵国条項撤廃を「確約」 会見でピン議長
【ニューヨーク18日共同】国連総会のピン議長は18日の共同通信などとの会見で、日本などが現在も国連憲章上で「敵国」とされている「旧敵国条項」について「削除されると確約することができる」と述べ、同条項撤廃のための憲章改正に障害はないとの考えを言明した。
議長は、既に作成し9月の国連総会特別首脳会合で採択される予定の「結論文書」草案の中で、同条項の撤廃の考えを明確にしている。
会見で議長は、草案の同条項に関する部分について「反対意見は何もない」と述べ、条項撤廃が国連加盟国の総意になっているとの認識を鮮明にした。(共同通信) - 7月19日》http://headlines.yahoo.co.jp/hl?...