1992年4月、EC がボスニアの独立を承認し、首都サラエボはセルビア人勢力により包囲される。
翌年1993年7月半ば『ゴドーを待ちながら』を上演するためにサラエボに行ったスーザン・ソンタグは、封鎖された都市サラエボで、かつて五つあったうちのふたつの劇場がまだ演劇活動を続けていたことを報告してくれた。サラエボの人たちは「俳優も観客も劇場への往復の途上でいつスナイパーの銃弾や機銃掃射に見舞われ、殺されたり重傷を負わされたりするか、わからない」ような状況下に置かれていたにもかかわらず、演劇のような高度な文化活動の鑑賞を求め続けていたという事実に驚かされはしないか。
スーザン・ソンタグ (Susan Sontag)「サラエヴォでゴドーを待ちながら (Waiting for Godor in Sarajevo)」in 『この時代に想う テロへの眼差し(In Our Time, In This Moment)』(2002年, NTT 出版)