ゴダールを本気で追悼したいなら『愛の世紀』以降の映画こそが重要だ。
私はそう思う。
「悲しみ方が足りないから世界は良くならない」
Le Livre d'image でゴダールはそう語った。
支配者たちは常に邪悪だったし、現実はいつの時代にも過酷だったのは確かだ。
けれど悪党たちがグローバルな規模で本気を出し始めたのは21世紀になってから。ゴダールが Film socialisme で語ったように。
今や現実は決定的に変質した。金儲けのためならなんだってやる連中が、脇を弁護士たちで固め、他人の命も尊厳も歯牙にもかけないくせに、表面だけは人道的体裁を整え闊歩し始めた。やがて拝金主義はネガティブなものとはみなされなくなり、価値観は確実に変わってしまった。
AI が本格的に舞台に登場したのはこんな現実のさなか。
だからわたしは絶望感に捉われる。
と同時にわたしは強い憤りも覚える。
わたしにとってゴダールの映画は解読を待っている大いなる秘儀の本。
そこにはわたしが正しく読解しなくてはならない意味がイマージュの形で書き込まれている。
その読解作業をわたしはこれからもこっそり続けるつもりだ。
「世界の支配者たちは用心すべきだろう。
物言わぬ田舎娘(ベカシーヌ)にこそ用心すべきだろう。」
( Le Livre d'image )
2023/05/05/Thur