慰霊

《あ、

 この焼けただれた顔は

 一九四五年八月六日

 その時広島にいた人

 二五万の焼けただれのひとつ

 すでに此の世にないもの

 とはいえ

 友よ

 向き合った互いの顔を

 も一度見直そう

 戦火の跡もとどめぬ

 すこやかな今日の顔

 すがすがしい朝の顔を

 その顔の中に明日の表情をさがすとき

 私はりつぜんとするのだ

 地球が原爆を数百個所持して

 生と死のきわどい淵を歩くとき

 なぜそんなにも安らかに

 あなたは美しいのか

 しずかに耳を澄ませ

 何かが近づいてきはしないか

 見きわめなければならないものは目の前に

 えり分けなければならないものは

 手の中にある

 午前八時一五分は

 毎朝やって来る

 一九四五年八月六日の朝

 一瞬にして死んだ二五万人の人すべて

 いま在る

 あなたの如く 私の如く

 やすらかに 美しく 油断していた》

「アメリカ側から、原爆被害者の写真を発表してよろしい、と言われた年」に石垣りん

職場の組合書記局からの依頼をうけ「はじめて目にする写真を手に」書いた詩、「挨拶 原爆の写真によせて」(1952年8月の作品)。

《いま在る

 あなたの如く 私の如く

 やすらかに 美しく 油断していた》

頭のなかで、カチリと音がする

これとあれとがリンクする

あれとあれ

あれとこれが

あれとこれも

土門拳写真展で見た男の子の写真

小さな布団に横たわり

小さな掛け布団をかけてもらっている

顔の上には小さな白い布

お母さんのお腹のなかにいたときに被爆

学校に上がるか上がらないか位までしか生きられなくて死んでしまった男の子

小さなやせっぽちの男の子

自分の死を悟って「ぼくの写真 撮って」と土門拳に言ったという

頭のなかで 次々と

カチリ カチリと音がする

世界が広島から学ぶべきもの

《日本が広島から学んだものとして私にいえることは、あの極大の悲惨に抗して人間が生き延びたこと、そして死んだ人間の、その死への抗い方、生き残った者らの悼み方、記憶の仕方をつうじて、それが人類の威厳を示している、ということです。私らは日本語の文学においてそれをいくらかなりと表現しえたと思います。

日本は、広島から核エネルギーの生産性を学ぶ必要はありません。つまり地震津波と同じ、あるいはそれ以上のカタストロフィーとして、日本人はそれを精神の歴史にきざむことをしなければなりません。広島の後で、おなじカタストロフィーを原子力発電所の事故で示すこと、それが広島へのもっともあきらかな裏切りです。》

大江健三郎『私らは犠牲者に見つめられている』ル・モンドフィリップ・ポンス記者の問いに『世界』2011年5月号)

世界が広島から学ぶべきもの

それは核エネルギーの生産性などではない!!!

このことを何度も何度も

頭に叩き込め

そしてこのうたを高らかに歌いながら交信しよう!

覚醒せよ

新時代の若者たちよ

無知なる金の亡者たちに

真っ向から立ち向うのだ

なぜならやつらは

軍隊、法廷、大学に潜り込み

精神的闘争を挫折させ

できることなら永久に

肉の戦いを長引かせようとするだろうから

絵を描くひとよ!

彫刻を彫るひとよ!

建物を建てるひとよ!

あなたがたにわたしは呼びかける

当世風気取りの阿呆どもに

あなたがたの力を挫かせてはならぬ

ウィリアム・ブレイク『ミルトン』の序詞 translated by Lucy)

党派を超えて、ジャンルを超えて、所属性別年代、趣味嗜好の違い、

そして国境など軽々と飛び越え、

永遠なる若者たちよ、今こそ、共通のゴールに向かって、

団結あるのみ!

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送電線をすべての国民に解放せよ !

大手電力会社による送電線の独占が電力不足の原因であることを指摘する、広瀬隆さんの主張。

「電力会社の原発はほぼ5000万KWだが、今夏のピーク時には、福島第一が廃炉になり、福島第二、東通、女川、東海第二が全滅し、柏崎刈羽が3基再起不能で停止、さらに全土で定期検査中の原発が運転再開不能のため、事実上1300万KWしか稼働しない状況にある。

 この頼りない原発より、資源エネルギー庁が公表している《産業界の保有する自家発電6000万KW》(昨年9月現在、添付ファイル)のほうが、はるかに大きなバックアップとしての発電能力を持っている。

 「原発代替エネルギーとして自然エネルギーに転換せよ」という声が圧倒的に多いが、日本人が"快適な生活”をするために使っている電気の大半を生み出しているのは、現在は火力発電である。《この火力発電は、日本においてきわめてすぐれた世界最高度のクリーンな新技術を導入しているので、何ら問題を起こしていない》。決して原発が、電力の大半をになっているのではない。原発は事故続きで、4分の1も発電していない。

 自家発電をフルに活用すれば、このすぐれた、クリーンな火力だけで、「まったく現在のライフスタイルを変えずに、節電もせずに、工場のラインを一瞬でも止めることなく」電気をまかなえる。これは、将来、自然エネルギーが不要だと言っているわけではない。多くの人が抱いている 《「自然エネルギーで代替しなければ原発を止められない」という現在の反原発運動の固定観念は、まったくの間違いである。》

 将来のエネルギー構成をどうするべきかについてはここで論じないが、原発を止めるのに、選択肢の一つである自然エネルギーは、今のところ特に必要ではない。つまり、産業界を味方につけて自家発電をフルに活用し、原発を止めることのほうが、もっと重要である。

 週刊朝日6月10日号で私が特集したように、週刊朝日の記者が各電力会社に取材した結果、興味深い電力供給について裏の構造が明らかになった。全国で、電力会社が他社受電の発電能力を秘密にして、取材にも答えようとしなかった。特に九州電力だけは、「発電設備ごとの能力の内訳は公開していない。経営戦略情報なので教えられない」と、火力・水力・他社発電(自家発電からの買い取り)・原子力の内訳さえも答えないというトンデモナイ非常識な態度をとった。この九州電力が、原発を動かせないので夏に電力不足になる、と言い立てている。

 なぜ電力会社は、これら当たり前の事実を隠そうとするのか、という疑問から、ここで重大なことが明らかになった。

 それは、《「電力会社が自家発電をフルに利用すれば電力不足が起こらない」》、この事実を国民に知らせると、産業界からも、一般消費者からも、「送電線を自家発電の民間企業に解放せよ!」という世論が生まれる。そして制度が改善されて、誰もが送電線を自由に使えるようになると、地域を独占してきた電力会社の収益源の牙城が崩れる。送電線の利権だけは、何としても電気事業連合会の総力をあげて死守する必要がある、と彼らは考えている。九つの電力会社にとって、福島原発事故を起こした今となっては、原発の確保より、送電線の確保のほうが、独占企業としての存立を脅かすもっと重大な生命線である。そのため、自家発電の電力を買い取らずに、「15%の節電」を要請するという行動に出てきたのである。

 したがって日本人は、「自然エネルギーを利用しろ」と主張する前に、《「送電線をすべての日本人に解放せよ!」》 と声をあげることが、即時の原発廃絶のために、まず第一に起こすべき国民世論である。何しろ、送電線が解放されて、安価に送電できなければ、自家発電ばかりでなく、自然エネルギーの自由な活用もできないのだから。

 原発廃絶は、反原発運動の自己満足のために実現されるべきものではない。産業界も含めた、すべての日本人のために進められるべきである。

「自家発電6000万KW・ ”原発なし”で電気は大丈夫」  広瀬 隆 

(たんぽぽ舎での学習会でもらったチラシより転載)

たんぽぽ舎

http://www.tanpoposya.net/main/...

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ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ

《「原子爆弾」と「原子力」と何が違う?突き詰めていくと、器が異なるという一点だ。ウランだのプルトニウムだのを、ミサイルのパッケージに入れれば、「核兵器」になる。同じ放射性物質を原子炉に組み込めば、今度は「核燃料」と呼ぶ。どちらも、今の経済システムにおいては、がっぽがっぽ儲かる商売として成立するのだ。

 「被爆」と「被曝」と何が違う?原子爆弾を落とされた人間は「被爆者」と呼ばれるが、原子力発電所放射能汚染を浴びせられた人間が「被曝者」となる。でもどちらも、生命の基礎をむしばまれ、「ヒバクシャ」として終わりのない被害を受ける。》       

ーーアーサー・ビナード「 [ヒロシマナガサキ、フクシマ] 」(「日々のとなり」月刊アルコムワールド May 2011)

詩人のビナードさんは、ポイントを見抜いてる。

わたしたちは「被爆」と「被曝」という漢字の違いに騙されてはいけないのだということ。「被爆」も「被曝」も、とどのつまりは「放射能」に曝されること( exposure to radiation )を意味するのだから。

人類の歴史において兵器として実際に使用されたふたつの原子爆弾

ウラン原子爆弾が広島に。プルトニウム型原爆は長崎に。

「安らかに眠って下さい

過ちは繰り返しませぬから」

広島を舞台にした絵本を作るため広島の原爆資料館に通い続けているビナードさんは、平和公園にある慰霊碑の意味について自らに問いながらこう続けている。

《慰霊碑の「過ち」を、ぼくは「ヒバクさせること」と理解している。マーシャル諸島でもスリーマイル島でもチェルノブイリでも東海村でも過ちは繰り返され、福島第一原発もヒバクの渦だ。安らかに眠るわけにはいかず、原子爆弾原子力と手を切って、終止符を打つ以外に生きる道はない。》

目を閉じて、ヒロシマナガサキのまちのことを思い返す。

今もじっと身を潜めるようにしながらこちらをずっと見ている死者たちの気配。

立ち上がって、動き出したとき、道の向こうに未来が微笑む。

彼らも微笑む。

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風が吹くとき

1982年にイギリスで出版されたレイモンド・ブリッグズグラフィックノベル風が吹くとき』がわたしに教えてくれること

従順な善人のままが世界を滅ぼす

抗議して 生き残れ

DAVID BOWIE WHEN THE WIND BLOWS -風が吹くとき- (1986)

http://www.youtube.com/watch?...

と、書いた、半年後の 2011年3月、突然、ものすごいリアリティーを獲得してしまった作品。

《非暴力は、問題に無関心でいるということではありません。

逆に、しっかりと関わることが重要です。》ーダライ・ラマ14世

善良な市民として生きるってことは、問題に無関心でいるということじゃないよ。

逆に、しっかりと関わることが重要だよ、絶対。ーLucy 1世

だから より強く 抗議せよ

表現方法は多様であるにせよ

何度も何度も繰り返し見て、感じとること。感じて、理解すること。深く。より深く。

主題歌 WHEN THE WIND BLOWS by DAVID BOWIE

http://www.youtube.com/watch?...

風が吹くとき デジタルリマスター版 [DVD]

http://www.amazon.co.jp/...

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「市民」としての小田実

「クロード・ルフォールによれば、"近代の民主主義は、政治と思想が乖離しているので、全体主義へと向かう傾向がある"」

「そう、私も同じ意見だ」

「私が信じるのは、死を前にした証言者だ」

ジャン=リュック・ゴダール『アワーミュージック』より)

2007年7月30日 2:05 am、小田実、死去。75歳。

http://www.47news.jp/CN/200707/...

「ふつうの人のつながり」「市民」という言葉を大切にして、こう解説した。

デモ行進の時、だれも名刺交換はしない。隣を歩く者の正体を知らず、ある問題への怒り、その解決への思いと志だけを共有して歩く老若男女、それが「市民」だ。

(2007年7月30日付朝日新聞夕刊「評伝:焼け跡原点、行動の作家」より)

以下は、小田実が残したメッセージの一部。

 国が勝手につくった政治,政策、それにただ従うだけであれば、独裁政治です。それよりもう少しましなのが、政治家が集まって政党をつくって、政党が政策をつくるもの。これは独裁政治よりはましですが、政党が勝手にやるものです。選挙というものは矛盾しています。一つには、全体の政策をつくってわれわれに提示するけれど、同じ政党でも、それらの政策が矛盾することがあります。A 政党の政策 X には賛成だけれども、政策 Y には反対で、政策 Z はどうかと思うというときデモもするのでるが、たいてい最大公約数として、結局いろいろガマンして、その政党に投票する。でも、それは、本当はおかしいわけです。独裁政治よりはましだけれども、そういう矛盾が表れて来る。選挙自体の問題が問われていると思います。それに、議会が何でも勝手に決めていいのかという問題もあります。裁判所は何のためにあるのか、という提言と同じです。

 もう一つ問題なのは、そのときの政策がよくても、事態が変わって来たり、問題が変わったりする。突発的なことが起こったときに、われわれは委任していいのかという点です。一つひとつの問題について選挙をしないといけないでしょう。

・・・

 結局、選挙のとき、市民はいろんな政策を持って、そのときどきの政党の掲げる政策に近いものに投票する。あるいは逆に「やり直せ」と言って、デモ行進するとか、ストライキをするとか、そういう動きが出てくるものです。そういうことを全部含めたのが民主主義だと思うんです。民主主義とは、制度のことではなくて原理の実現なんですから。選挙をやっていれば、それで終わりということになってはいけないと私は痛感しています。

・・・

ある意味で間接民主主義を認めざるを得ないんですが、しかしわれわれは全体として直接民主主義的なものをぶつけていかないといけない。でないと、間接民主主義は腐っていきます。それがどんなふうにして動いていくかに注意していないといけません。たとえば、A 政党と B 政党、二大政党があれば、政権交代ができるというけれども、政権交代したらどうなるか。やがて二つの政党は似て来ます。どっちも選挙の票がほしいからですね。それでは、結局、議会の独裁になってしまう。

 今、アメリカ合衆国民主党と共和党の政策がだいぶちがって来ているけれども、「九・一一」直後は、まったく同じでした。「愛国者法」をいっしょにつくったり、民主党も共和党も「テロ撲滅」の大義名分でいっしょに自由を抑圧するようになった。今になって随分離れて来て、これからどうなるかわかりませんが、前はいっしょだったんです。ベトナム戦争のときだって、いっしょでした。それがだんだん分かれていったわけです。

 分かれる基本的な力になったのは、民衆の力、市民の力です。政党人が目覚めてやったんじゃなくて、三〇万人とか、大勢の市民がデモ行進をした。私も参加したことがあります。そういう動きが政治を変えていったんです。市民が動かなければ、変わらない。だから、こうすべきだといういことを自分たちでわきまえて、一つの力にしていけばいいと思うんです。そのような力になるためには、これからは自分たちがそれぞれの政策をもたないといけません。

(「「選挙民主主義」の矛盾」&「市民が動かなければ、政治は変わらない」in『中流の復興』)

『中流の復興』: オランダ、ハーグでの「恒久民族民衆法廷 (Permanent Peoples' Tribunal)」(2007年3月21日ー25日) 判決文収録

小田実HP http://www.odamakoto.com/jp/

市民の意見30 http://www1.jca.apc.org/iken30/

九条の会 http://www.9-jo.jp/

画像:London でのデモ行進 (19 Mar 2005)

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児玉龍彦 (東京大学アイソトープ総合センター長) 国の原発対応に満身の怒り

2011年7月27日 (水) 衆議院厚生労働委員会
「放射線の健康への影響」参考人説明より
児玉龍彦(参考人 東京大学先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長)

http://www.youtube.com/watch?...

【全内容書き起こし】

《わたくしは東京大学アイソトープ総合センター長の児玉ですが、3月15日に大変に驚愕いたしました。

私ども東京大学には27箇所のアイソトープセンターがあり放射線の防護とその除染などの責任を負っております。それでわたくし自身は内科の医者でして、東大病院の放射線施設の除染などにずっと数十年関わっております。

3月15日に、まずここの図にちょっと書いてあるんですが、我々最初にまず午前9時頃、東海村で5マイクロシーベルトという線量を経験しまして、それを第10条通報という文科省に直ちに通報いたしました。その後、東京で0.5マイクロシーベルトを超えるその線量が検出されました。これは一過性に下がりまして。

次に3月21日に雨が降り、0.2マイクロシーベルト等の線量が降下し、これがこんにちにいたるまで高い線量の原因になっていると思っています。

それでこの時に枝野官房長官は「さしあたり健康に問題はない」ということをおっしゃいましたが、わたくしはその時に実際にこれは大変なことになると思いました。

なぜかというと、現行の放射線の障害防止法というのは、高い線量の放射性物質が少しあるものを処理することを前提にしています。このときは総量はあまり問題ではなくて、個々の濃度が問題になります。

ところが今回の福島原発の事故というのは、100キロ圏で5マイクロシーベルト、200キロメートル圏で0.5マイクロシーベルト、さらにそれを越えて、足柄から静岡のお茶にまで汚染が及んでいることは、今日、すべてのみなさんがご存じの通りであります。

われわれが放射線障害をみるときには、総量を見ます。それでは東京電力と政府はいったい今回の福島原発事故の総量がどれぐらいであるか、はっきりとした報告はまったくされておりません。

そこで私どもはアイソトープセンターの知識をもとに計算してみますと、まず熱量からの計算では広島原爆の29.6個分に相当するものが漏出しております。ウラン換算では20個分のものが漏出していると換算されます。さらにおそるべきことにはこれまでの知見で、原爆による放射能の残存量と、原発から放出されたものの放射線の残存量は1年に至って、原爆が10分の1になるのに対して、あ、すいません、原爆が1000分の1程度に低下するのに対して、原発からの放射線汚染物は10分の1程度にしかならない。

つまり今回の福島原発の問題はチェルノブイリ事故と同様、原爆数十個分に相当する量と、原爆汚染よりもずっと大量の残存物を放出したということが、まず考える前提になります。

そうしますと、われわれはシステム生物学というシステム論的にものをみるやり方でやっているのですが、総量が少ない場合には、ある人にかかる濃度だけを見ればいいです。しかしながら総量が非常に膨大にありますと、これは粒子です。

粒子の拡散というのは、非線形という科学になりまして、われわれの流体力学の計算ではもっとも難しいことになりますが、核燃料というのは、ようするに砂粒のようなものが、合成樹脂のようなものの中に埋め込まれております。

これがメルトダウンして放出されるとなると、細かい粒子がたくさん放出されるようになります。そうしたものが出てまいりますと、どういうことがおこるかというのが、今回の稲藁の問題です。

例えば岩手の藤原町では、稲藁5万7千ベクレルプロキログラム、宮城県の大崎1万7千ベクレルプロキログラム、南相馬市10万6千プロキログラム、白河市9万71千プロキログラム、岩手6万4千プロキログラムということで、この数値はけして同心円上にはいかない。どこでどういうふうに落ちているかは、その時の天候、また例えばその物質が水を吸い上げたかどうか。

それで今回の場合も、私は南相馬へ毎週末700キロメーター行って、東大のアイソトープセンターは現在までに7回の除染をやっておりますが、南相馬に最初にいったときには1台のNaIカウンターしかありません。農林省が通達を出したという3月19日には、食料も水もガソリンもつきようとして、南相馬市長が痛切な訴えをウェブに流したのは広く知られているところであります。

そのような中で通達1枚を出しても誰も見ることができないし、誰も知ることができません。稲藁がそのような危険な状態にあるということは、まったく農家は認識されていない。農家は飼料を外国から買って、何十万という負担を負って、さらに牛にやる水は実際に自分たちが飲む地下水にその日から代えています。

そうするとわれわれが見るのは、何をやらなければいけないのかというと、まず汚染地で徹底的な測量ができるようにすることを保障しなければいけません。われわれが5月下旬に行ったときに先ほど申し上げたように、1台しか南相馬になかったというけれど、実際には米軍から20台の個人線量計が来ていました。しかしその英文の解説書を市役所の教育委員会で分からなくて、われわれが行って、教えてあげて実際に使いだしてはじめて20個での測定というのができるようになった。それが現地の状況です。

それから先程から食品検査と言われていますが、ゲルマニウムカウンターというのでなしに、今日ではもっとイメージングベースの測定器が、はるかにたくさん半導体で開発されています。なぜ政府はそれを全面的に応用してやろうとして、全国に作るためにお金を使わないのか。3カ月経ってそのようなことが全く行われていないことに私は満身の怒りを表明します。

第二番目です。私の専門は、いわゆる小渕総理のときから内閣の抗体医薬品の責任者でして今日では最先端研究支援ということで、30億円をかけて、抗体医薬品にアイソトープをつけて癌の治療にやる、すなわち人間の身体の中にアイソトープを打ち込むのが私の仕事ですから、内部被曝問題に関して、一番必死に研究しております。

そこで内部被曝がどのように起きるかということを説明させていただきます。内部被曝というのの一番大きな問題は癌です。癌がなぜ起こるかというと、DNAの切断を行います。ただしご存知のように、DNAというのは二重らせんですから、二重のときは非常に安定的です。

これが細胞分裂するときは、二重らせんが1本になって2倍になり、4本になります。この過程のところがもの凄く危険です。そのために妊婦の胎児、それから幼い子ども、成長期の増殖の盛んな細胞に対しては、放射線障害は非常な危険性を持ちます。

さらに大人においても、増殖の盛んな細胞、例えば放射性物質を与えると、髪の毛、貧血、それから腸管上皮に影響しますが、これらはいずれも増殖の盛んな細胞でして、そういうところが放射線障害のイロハになります。

それで私どもが内部に与えた場合のことで具体的に起こるので知っている事例を挙げます。これは実際にはですね、一つの遺伝子の変異では癌はおこりません。最初の放射線のヒットが起こったあとにもう一個の別の要因で、癌への変異が起こるということ、これはドライバーミューテーションとか、パッセンジャーミューテーションとか、細かいことになりますが、それは参考の文献をつけてありますので、後で、チェルノブイリの場合や、セシウムの場合を挙げていますので、それを見ていただきますが、まず一番有名なのはα線です。

プルトニウムを飲んでも大丈夫という東大教授がいると聞いて、私はびっくりしましたが、α線は最も危険な物質であります。それはトロトラスト肝障害というかっこうで、私ども肝臓医は、すごくよく知っております。

要するに内部被曝というのは、さきほどから一般的に何ミリシーベルトという形で言われていますが、そういうものは全く意味がありません。I131は甲状腺に集まります。トロトラストは肝臓に集まります。セシウムは尿管上皮、膀胱に集まります。これらの体内の集積点をみなければ全身をいくらホールボディスキャンやっても、まったく意味がありません。

トロトラストの場合、このちょっと小さい数字なんで大きい方後で見て欲しいんですが。これは実際にトロトラストというのは造影剤でして、1890年からドイツで用いられ、1930年頃から日本でも用いられましたが、その後、20から30年経つと肝臓がんが25%から30%に起こるということが分かってまいりました。最初のが出て来るまで20年というのが何故かと言うと、最初にトロトラストはα線核種なのですが、α線は近隣の細胞を障害します。そのときに一番やられるのは、P53という遺伝子です。

われわれは今、ゲノム科学ということで人の遺伝子、全部、配列を知っていますが、一人の人間と別の人間はだいたい三百万箇所違います。ですから人間を同じとしてやるような処理は今日ではまったく意味がありません。いわゆるパーソナライズドメディスンと言われるやり方で、放射線内部障害を見るときにも、どの遺伝子がやられて、どのような変化が起こっているかということをみることが、原則的な考え方として大事です。

トロトラストの場合は、第一の段階でP53遺伝子がやられて、それに続く第二、第三の変異が起こるのが20年から30年かかり、そこで肝臓癌や白血病が起こってくるということが証明されております。

次にヨウ素131。これはヨウ素はご存知のように甲状腺に集まりますが、甲状腺への集積は成長期の甲状腺形成期がもっとも特徴的であり、小児に起こります。しかしながら1991年に最初、ウクライナの学者が甲状腺癌が多発しているというときに、日本やアメリカの研究者は、ネイチャーに、これは因果関係が分からないということを投稿しております。なぜそういったかというと1986年以前のデータがないから統計学的に有意だということが言えないということです。

しかし統計学的に有意だということが分かったのは、さきほども長瀧先生からお話しがありましたが、20年後です。20年後に何が分かったかというと、86年から起こったピークが消えたために、過去のデータがなくても因果関係があるということがエビデンスになった。いわゆるですから疫学的な証明というのは非常に難しくて、全部の事例が終わるまでだいたい証明できないです。

ですから今、われわれに求められている子どもを守るという観点からはまったく違った方法が求められます。そこで今、行われているのは国立のバイオアッセ―研究センターという化学物質の効果を見る、福島昭治先生という方がずうっとチェルノブイリの尿路系に集まるものを検討されていまして、福島先生が、ウクライナの医師と相談…集めて、500例以上の、前立腺肥大のときに手術をしますと膀胱もとれてきます、これを見まして検索したところ、高濃度の汚染地区、尿中に6ベクレルパーリッターと微量ですが、その地域ではP53の変異が非常に増えていて、しかもその、増殖性の前癌状態、われわれからみますと、P38というMAPキナーゼと、それからNFカッパーBというシグナルが活性化されているのですが、それによる増殖性の膀胱炎というのが必発でありまして、かなりの率で上皮内の癌ができているということが、報告されております。

それでこの量に愕然といたしましたのは、福島の母親の母乳から2から13ベクレル、7名で検出されているということがすでに報告されていることであります。次のページお願いします。

われわれアイソトープ総合センターでは、現在まで毎週700キロメーターだいたい1回4人ずつの所員を派遣しまして、南相馬市の除染に協力しております。

南相馬でも起こっていることはまったくそうでして、20キロ、30キロという分け方がぜんぜん意味が無くて、その幼稚園ごとに細かく測っていかないと全然ダメです。それで現在、20キロから30キロ圏にバスをたてて、1700人の子どもが行っていますが、実際には南相馬で中心地区は海側で、学校の7割は比較的線量は低いです。

ところが30キロ以遠の飯館村に近い方の学校にスクールバスで毎日100万円かけて、子どもが強制的に移動させられています。このような事態は一刻も早くやめさせてください。今、一番その障害になっているのは、強制避難でないと補償しないと。参議院のこの前の委員会で当時の東電の清水社長と海江田経済産業大臣がそのような答弁を行っていますが、これは分けて下さい。補償問題と線引の問題と、子どもの問題は、ただちに分けて下さい。子どもを守るために全力を尽くすことをぜひお願いします。

それからもう一つは現地でやっていて思いますが、緊急避難的除染と恒久的除染をはっきりわけて考えていただきたい。緊急避難的除染をわれわれもかなりやっております。例えばここの図表にでています滑り台の下、滑り台の下はここは小さい子どもが手をつくところですが、滑り台から雨水が落ちて来ると毎回濃縮します。右側と左側にずれがあって、片側に集まっていますと、平均線量1マイクロのところですと、10マイクロの線量が出てきます。それで、こういうところの除染は緊急にどんどんやらなくてはなりません。

それからこういう様々なコケが生えているような雨どいの下、これも実際に子どもが手をついたりしているところなのですが、そういうところは、例えばですね、高圧洗浄機を持って行ってコケをはらうと2マイクロシーベルトが0.5マイクロシーベルトにまでなります。

だけれども、0.5マイクロシーベルト以下にするのは非常に難しいです。それは建物すべて、樹木すべて、地域すべてが汚染されていますと、一か所だけを洗っても全体をやることは非常に難しいです。

ですから除染を本当にやるというときに、一体どれぐらいの問題がかかり、どれぐらいのコストがかかるかということをイタイイタイ病の一例であげますと、カドミウム汚染地域、だいたい3000ヘクタールなのですが、そのうち1500ヘクタールまで現在、除染の国費が8000億円投入されています。もしこの1000倍ということになれば一体どれだけの国費の投入が必要になるのか。

ですから私は4つのことを緊急に提案したいと思います。

第一番目に国策として、食品、土壌、水を、日本がもっている最新鋭のイメージングなどを用いた機器を使って、もう半導体のイメージング化は簡単です。イメージング化して流れ作業にしてシャットしていって、やるということでの最新鋭の機器を投入して、抜本的に改善してください。これは今の日本の科学技術力でまったく可能です。

二番目。緊急に子どもの被曝を減少させるために、新しい法律を制定してください。私のやっている、現在やっていることはすべて法律違反です。現在の障害防止法では、核施設で扱える放射線量、核種などは決められています。東大の27のそのいろいろなセンターを動員して南相馬の支援を行っていますが、多くの施設はセシウム使用権限など得ておりません。

車で運搬するのも違反です。しかしお母さんや先生に高線量のものを渡してくるわけにはいきませんから、今の東大の除染では、すべてのものをドラム缶に詰めて東京にもって帰ってきています。受け入れも法律違反、すべて法律違反です。このような状態を放置しているのは国会の責任であります。

全国には、例えば国立大学のアイソトープセンターというのは、ゲルマニウムをはじめ最新鋭の機種を持っているところはたくさんあります。そういうところが手足を縛られたままで、どうやって、国民の総力をあげて子どもを守れるでしょうか。これは国会の完全なる怠慢であります。

第三番目、国策として土壌汚染を除染する技術を、民間の力を結集して下さい。これは例えば東レとかクリタだとかさまざまな化学メーカー。千代田テクノルとかアトックスというような放射線除去メーカー、それから竹中工務店などさまざまなところは、放射線の除染に対してさまざまなノウハウを持っています。こういうものを結集して、ただちに現地に除染研究センターを作って、実際に何十兆円という国費をかかるのを、今のままだと利権がらみの公共事業になりかねない危惧を私はすごくもっております。

国の財政事情を考えたら、そんな余裕は一瞬もありません。どうやって本除染を本当にやるか。七万人の人が自宅を離れて彷徨っているときに国会は一体何をやっているのですか。以上です。 》

http://blog.livedoor.jp/...

このあと議員たちの質疑に答える児玉氏の映像と書き起こし

http://blog.livedoor.jp/...

Youtube の映像が削除された場合はこちらで見続けることができるよって教えていただきました。

衆議院インターネット審議中継】

http://www.shugiintv.go.jp/jp/...

検索条件

「2011年7月27日」>「厚生労働委員会」>「児玉龍彦」>で。

追記 (2011/08/04):

英、仏、独に翻訳された児玉氏の証言

http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/...

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